テンサー選定で繊維製品の品質は決まる!4つの視点で整理する「現場に最適なテンサー」の考え方

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テンサー選定で繊維製品の品質は決まる!4つの視点で整理する「現場に最適なテンサー」の考え方

テンサーは、整経機に対応したクリールスタンドをはじめ、糸供給工程の各所に設置される重要な装置です。例えば整経工程では、数百本にも及ぶ経糸を同時に引き出し、ビームと呼ばれる大径ボビンへ巻き取っていきますが、この際、一本一本の糸にかかる張力を均一に保つこと、それが不可欠です。

張力にばらつきがある状態で整経された経糸は、その後の織機、編機、組紐機等の機械が使用される製造工程で、生地の密度ムラや風合いの不均一、品質低下といったトラブルを引き起こす要因となります。そのため、整経工程においては「一定張力の維持」が最も重要な管理ポイントの一つとされています。

クリールに取り付けられたワッシャーテンサー

織り、編み、組紐のイメージ

 

実際の機屋(はたや)における織布工程でも、テンション管理の重要性は変わりません。

湯浅糸道の製品は、多くの織機に採用されており、例えば織機の側面には、横糸の張力を安定させるフラットスプリングテンサーが使用されるケースが多くあります。ビームから供給される経糸に横糸を絡ませながら生地を形成していく工程でも、横糸にかかるテンションが不安定だと、織り上がる製品の品質に直接影響を及ぼします。

 

このようなテンション管理の考え方は、織布だけでなく、ミシンによる縫製工程など、糸を扱うあらゆる製造工程に共通しています。糸供給から製品完成に至るまで、適切なテンションを安定して与え続けること、それが品質を支える基盤であり、その役割を担うのがテンサー装置です。

 

現場に合ったテンサーを選ぶために|本記事の狙い

湯浅糸道工業では、糸に安定したテンションを与えるためのテンサー製品を、用途や工程に応じて幅広くラインナップしています。その種類は多岐にわたり、繊維の種類や製造条件、設備構成など、お客様それぞれの製造環境に適したテンサーを選定することが可能です。
一方で、「どのテンサーを、どの工程で選ぶべきか」という判断は、決して単純ではありません。

 

テンサーを選定する際には、加えたいテンションの強弱や調整幅だけでなく、糸の通し方、設備への組み込み方、糸への影響度など、現場ごとに重視すべきポイントが存在します。本記事では、そうした判断を行う際の一つの指標として、テンサー装置を複数の視点から整理・分類します。

張力を測定している写真

 

具体的には、テンサーを大きく4つの観点で分類し、それぞれの特性やテンションのかかり方の傾向を、図表を交えてわかりやすく紹介します。
自社の工程や目的に照らし合わせながら読み進めていただくことで、「自分たちの現場に合うテンサーの考え方」を整理する手がかりとなることを目指しています。

 

①ワイヤー工程に適したテンサー

①ワイヤー工程に適したテンサー

 

湯浅糸道のテンサー製品の中には、糸だけでなく金属線(ワイヤー)の走行に対応できるモデルが存在します。主な用途としては、電話線や電子機器内部に使用されるファイバーケーブル、銅線などの製造工程が挙げられます。

ワイヤー走行に対応できるテンサーとしては、テンションイコライザー、ヒステリシステンサー、スプリングテンサーが該当します。図に示す通り、これらのテンサーは比較的高いテンション領域まで対応できる位置づけとなっています。

 

中でもテンションイコライザーは、湯浅糸道のテンサー製品群の中でも、与えられるテンションの強さが最上位クラスに位置します。

テンションイコライザー

テンションイコライザー

このテンサーには、内部に軸受けを備えた金属ローラーが採用されており、ワイヤーの走行に合わせてガイド自体が回転します。金属線は一般的な糸に比べ、ガイドとの摩擦抵抗が大きくなりやすいため、ローラー式とすることで摩擦を極力低減し、安定した走行と高テンション付与を両立しています。

[テンションイコライザーに関する記事]
> 二つのローラーで強いテンションをかける!「テンションイコライザー」の特長とは

 

このように、テンサーを選定する際は、与えたいテンションの強弱だけでなく、対象物(糸かワイヤーか)、加工内容、摩擦条件といった使用環境に適した機構や機能を備えているかという視点が重要になります。

 

②回転による抵抗か、接触による抵抗か

②回転による抵抗か、接触による抵抗か

 

回転式テンサーの代表例としては、ワイヤーにも対応できるテンションイコライザーのほか、ヒステリシステンサーが挙げられます。

ヒステリシステンサー

ヒステリシステンサー

ヒステリシステンサーでは、糸走行と同方向に内部のローラーが回転することで、摩擦を抑えながらテンションを与える構造です。テンションを弱めた状態では糸が軽快に走行し、調整を強めると磁力により内部ローラーが回転しにくくなり、抵抗が増してテンションがかかります。

回転式テンサーは、糸をしごくことなく張力を与える構造のため、糸への負担が少なく、伸縮糸極細電線に適しています。

[ヒステリシステンサーに関する記事]
> 糸振れを抑制!画期的な装置「ヒステリシステンサー」の機能とは

 

これに対し接触式テンサーは、糸とガイドの接触強度によってテンションを調整します。

例えば、ゲートテンサー(R002020WH)のように重りの重量で接触圧を変える方式や、スプリングテンサーのようにバネの弾性力を利用して接触度合いを制御する方式があります。構造が比較的シンプルで、テンションの調整イメージが直感的である点が特徴です。

ゲートテンサー(R002020WH)

ゲートテンサー(R002020WH)

[ゲートテンサーに関する記事]
> 適切なテンション管理で製品品質の安定を支える!ゲートテンサーの特長と選び方を解説

 

スプリングテンサー

スプリングテンサー

 

このように、テンションのかけ方一つをとっても、摩擦の発生メカニズムや調整感、摩耗特性は大きく異なります。用途や工程条件に応じて、回転式か接触式かを見極めることが、適切なテンサー選定につながります。

 

③糸を曲げるか、曲げないかという選定視点

③糸を曲げるか、曲げないかという選定視点

 

テンサーは、糸の走行経路をあえて屈曲させることでテンションを与えるタイプと、走行ルートを極力変えずにテンションをかけるタイプに分類できます。
屈曲を利用する方式では、テンサー内部の構造により糸の進行方向を変え、ガイドや部品との接触角度を増やすことで抵抗を生み、テンションをコントロールします。

 

屈曲ありのテンサーとしては、ストレージテンサー、ゲートテンサー、ワッシャーテンサー、アンチスナールテンサー、リングリングテンサーなどが挙げられます。比較的シンプルにテンションを付与できる一方、糸の曲げや接触が増えるため、屈曲なしのテンサーと比べて糸への負担が大きくなりやすいという特性があります。

ストレージテンサー

ストレージテンサー

[ストレージテンサーに関する記事]
> アームの動きで安定したテンションを実現する「ストレージテンサー」

 

ワッシャーテンサー

ワッシャーテンサー

[ワッシャーテンサーに関する記事]
> 糸張力の乱れはガイド摩耗にあり!実験で明らかになった「ワッシャーテンサー」活用の最適解とは?

 

アンチスナールテンサー

アンチスナールテンサー

[アンチスナールテンサーに関する記事]
> スナールを防いで操業性を向上させる!製品品位を保つYUASAのアンチスナールテンサーとは?

 

注意点として、糸の種類によっては、屈曲を極力避けるべきケースも存在します。

例えば、ガラス繊維糸のように脆性が高い糸や、中空糸のように内部構造を持つ特殊な糸は、屈曲によるダメージや性能低下を招きやすいため注意が必要です。このような場合には、糸の走行を曲げずにテンションを与えられる屈曲なしのテンサーを選定することが重要です。

 

テンション制御において、「どれだけ張れるか」だけでなく、「糸にどれだけ負担をかけないか」という視点も欠かせません。糸へのダメージを最小限に抑えたい工程では、屈曲を伴わないテンサーの選定が有効な判断となります。

 

④目盛り・重り・感覚で異なるテンション調整

④目盛り・重り・感覚で異なるテンション調整

 

テンサーは、テンションの調整方法の違いによっても分類することができます。代表的な調整方法としては、

目盛りによる調整
重りによる調整
感覚による調整

の3つがあります。

目盛りによる調整は、ダイヤルやノブに刻まれた目盛りを回すことでテンションを設定する方式で、ストレージテンサー、ワッシャーテンサー、ヒステリシステンサーなどが該当します。主に数値で設定を再現できるため、条件管理がしやすい点が特長です。

ストレージテンサーの検査・検品イメージ

 

重りによる調整は、重りの重量によってテンションを与える方式で、ゲートテンサー(R002020WH)のほか、リングリングテンサーやテンションイコライザーの一部製品にも採用されています。
重りは0.数~数グラム単位のものを組み合わせ(枚数)で調整できるため、重量=数値として再現・管理しやすい点も特長です。

実際の現場では、付属の重りでは管理できないほど大きな張力をかけたい場合に、必要な張力に相当する重量の水や砂を入れたペットボトルを重りとして使用されている例もあります。

 

重りを重くするとゲートが閉じて抵抗力が強くなる

> 適切なテンション管理で製品品質の安定を支える!ゲートテンサーの特長と選び方を解説

 

一方、テンションイコライザーの一部、フラットスプリングテンサー、スプリングテンサーなどは、ねじの締め付け量によってテンションを調整する方式で、作業者の感覚に依存する側面があります。細かな微調整が可能である反面、再現性や管理方法には工夫が求められます。

①ナットを糸道部分から遠ざける方向に回すと②バネが引っ張られて③ゲートが閉じて抵抗が強くなる

 

そのため、初心者の方や、工程条件を明確に管理したい場合には、ダイヤル式や重り式のテンサーが扱いやすいでしょう。糸の品種や用途ごとに適正テンションが異なる現場では、「この糸はダイヤル3」「この糸は5」といった形で設定値を整理し、社内マニュアルとして運用することが、安定した品質管理につながります。

 

試験設備に裏付けられたテンサー開発力

テンサー装置によるテンション制御は、装置単体の性能だけでなく、糸と直接接触するガイドの品質によっても大きく左右されます。ガイドの材質や表面状態が適切でなければ、意図したテンションコントロールは成り立ちません。

セラミック糸道が実現する、繊維へのダメージ低減と長寿命化の技術革新

> セラミック糸道が実現する、繊維へのダメージ低減と長寿命化の技術革新

 

湯浅糸道工業は、長年にわたりセラミック・金属・樹脂製のガイド製品を製造してきたメーカーであり、年間数百万点に及ぶ製品を安定して供給してきました。そのガイドを自社で製造しながら、テンサー装置の開発・製造も並行して行っている点は、大きな特長でしょう。

「どの程度のテンションを与えられるか」
「ガイドとの相性はどうか」
「表面仕上げの違いで挙動はどう変わるか」

といった要素を、製品設計段階から一体で検証できるのは、自社内に紡糸試験機摩耗試験機などの評価設備を備えているからです。糸の挙動や摩耗、毛羽立ちの発生を実際の使用条件に近い形で評価し、その結果をもとに、現場に即したエビデンスのあるテンサー装置を提案できる点が、湯浅糸道工業の強みです。

 

検証に基づく提案事例|インターレーサーとテンサーの組み合わせ

あるお客様より、「特定の糸を製造するために、どのインターレーサーを選べばよいか」というご相談をいただきました。インターレーサー製品は、紡糸・合糸工程で使用される装置で、ノズルから噴出する圧縮空気によってフィラメント同士を絡ませ、糸に「交絡」を与える役割を担います。

本案件では、お客様の糸を実際にお預かりし、社内の試験設備を用いて複数のインターレーサー製品で検証を実施。各製品について、交絡の出方を比較し、試験後の糸を水に浮かべて交絡数を確認するなど、定量的な評価を行いました。

 

社内の試験設備を用いて糸を交絡させている様子の写真

社内の試験設備を用いて糸を交絡させている様子の写真

> 「省エネ」×「高品質」を実現した「インターレーサー」の性能に迫る

 

同時に重要となったのが、インターレーサー前後のテンション条件です。交絡の安定性や糸品質はテンションの影響を大きく受けるため、インターレーサーの前後に設置するテンサー製品についても複数パターンを試し、最適な組み合わせを検証しました。

実証実験では、糸の状態写真やテンション数値も取得し、「このインターレーサーと、このテンサーの組み合わせが最も理想的な交絡を得られる」という形で提案を行いました。
その結果、提案内容は高く評価され、初回導入後、実際の現場でも安定した結果が得られたことから、台数を増やしての継続導入へとつながりました。

 

社内の紡糸・試験設備の写真

※社内の紡糸・試験設備の写真
(左:条件不適合により糸切れが発生している様子、右:候補となるテンサーを設備に設置している様子)

湯浅糸道工業では、このように社内で検証を行い、エビデンスに基づいた装置構成を提案できる体制が整っています。

 

最適なテンサー選定を支える湯浅糸道の提案力

テンサーの選定は、単にテンションの強弱だけで決まるものではなく、糸の特性や工程条件、装置構成まで含めた総合的な判断が求められます。湯浅糸道工業株式会社は、豊富な製品ラインナップに加え、ガイドとテンサーを一体で検証できる開発体制、そして実証に基づく提案力を強みとして、現場ごとの課題に向き合ってきました。

「どのテンサーを選ぶべきか」「今の工程は最適なのか」といった悩みをお持ちの際は、ぜひ一度ご相談ください。現場に寄り添いながら、最適な解決策をともに導き出します。

 

> 湯浅糸道工業株式会社の公式ウェブサイト

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