
Case.23製品紹介
適切なテンション管理で製品品質の安定を支える!ゲートテンサーの特長と選び方を解説
糸を「仕上げる」「織る」「編む」―繊維業界のあらゆる工程において、糸に適切なテンション(張力)をかけることは、美しい製品づくりの基本です。糸がたるめば加工の精度や品質に影響し、逆に張りが強すぎれば断糸や風合いの劣化を招いてしまいます。
そこで重要な役割を果たすのが、テンションを付与する装置=テンサーです。湯浅糸道工業が誇る多彩なテンサーラインナップの中でも、「ゲートテンサー」と呼ばれるモデルは、糸を扱う現場で幅広く活躍しています。
本ページでは、糸道メーカーならではの視点から生まれた、ゲートテンサーの特長と活用シーンについてご紹介します。
安定した巻き返しを実現するゲートテンサーの特長
ゲートテンサーは、糸にテンションを付与するために設計された、湯浅糸道工業のテンサーシリーズのひとつです。
前後に配置されたスネールガイドを通った糸は、中央にあるバンスクリップのような形状をしたセラミック製ガイドを経由することで、適度な張力をかけられます。この独自構造が、糸への均一なテンション付与を実現しています。
湯浅糸道がラインナップするテンサーの中でも、ゲートテンサーは比較的高い張力を持つ製品に位置づけられます。そのため、特に巻き返し工程や撚糸工程、産業資材の織り工程など、確実な糸の張りが求められる場面で力を発揮します。
たとえば、織物や編物の製造に向けた準備をする段階で、原糸メーカーから仕入れた糸を各工程に適した形で巻き直す「巻き返し作業」を行うことがあります。このとき、十分なテンションがかかっていないと、巻き取りが緩くなり、パッケージがゴワついてしまうため、後工程での品質トラブル(解舒・供糸不良や織り・編みムラなど)につながります。
こうした問題を防ぎ、安定した生産と製品品質を支えるのが、ゲートテンサーの大きな役割です。
ウエイト式・バネ式・小型タイプ|ゲートテンサー各種モデルの特長
数値管理に対応|ウエイト式【R002020WH】の特長
ゲートテンサーには、大きく2種類のラインナップがあり、そのひとつがウエイト式【R002020WH】です。
ウエイト式では、ゲートの先に取り付けられたウエイト台に重りを載せ、糸にテンション(張力)を付与します。標準仕様として、1gのウエイトが10枚付属しており、重りを追加することで、より高いテンションを与えることが可能です。
たとえば5g、10gと重くしていくことで、糸に対する抵抗力が強まり、糸をしっかりと張ることができます。
なお、使用環境に応じて、お客様ご自身で独自のウエイトをご用意いただいたり、容器に水を入れて代用されるケースもあります。現場ごとの柔軟な運用が可能な点も、ウエイト式の特長のひとつです。
また、ウエイト式は数値で張力管理ができる点が大きなメリットです。重りの質量(g)に応じた管理ができるため、工程ごとの再現性や設定変更が容易になります。
ただし、極端に高いテンションを必要とする場合には、次に紹介するバネ式をご検討いただくことをおすすめします。
高テンション対応|バネ式【R003020WH】の特長
バネ式は、高いテンション付与を求める用途に適しており、数百gf(グラムフォース)まで対応できる設計となっています。湯浅糸道工業のテンサーシリーズの中でも、特に高テンションが必要なシーンに向いたモデルです。
たとえば、太番手の糸や走行時にブレが大きい糸など、しっかりとした張力を安定的にかけたい場面で効果を発揮します。
本製品は、内部でバネと部品ナットが連結されており、ナットを糸道部分から遠ざける方向に回すことでバネが引っ張られ、糸道部分の抵抗を強くする構造です。ナットを回す度合い(バネの引っ張り具合)によって現場作業者がテンションの強さを自由に調整できるため、糸の種類や生産条件に応じた細やかな設定が可能です。
また、これらのシリーズでは前後ガイドのカスタマイズも可能です。
ご要望に応じて設計・お見積り対応致しますので、お気軽にお問い合わせください。
リーズナブルな選択肢|【K111002WH】&【K111001WH】小型タイプの特長
標準仕様の【ウエイト式:R002020WH】および【バネ式:R003020WH】に加え、それぞれには小型タイプもラインナップされています。小型タイプは、【ウエイト式:K111002WH】、【バネ式:K111001WH】の2機種をご用意しています。よりリーズナブルな選択肢として小型モデルが生まれました。写真から分かるように、セラミックパーツや金属部品をコンパクトにしています。
一方で、テンションをかけるセラミックガイドとの接触点が少ないため、標準モデルに比べて最大張力はやや低めとなります。比較的低テンションでの運用を前提とする工程に適しており、また、小スペースでの設置を重視する場合には、小型モデルのコンパクトさが大きなメリットとなります。
このように、取り付け場所の自由度も高いため、スペース制約のある設備レイアウトにも柔軟に対応できます。コスト、スペース、使用テンションのバランスを考慮し、ぜひ最適なモデルをご検討ください。
なお、今回ご紹介の4シリーズのカタログ掲載製品では、標準仕様として、ボディにΦ12.8までの支柱に対応した取付け部品を備えています。ただし、現場の設置条件に応じて、取り付け部品のカスタマイズ設計も対応可能ですので、仕様変更をご希望の場合は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
糸の品質を守る|ゲートテンサーに施した構造面の工夫
巻き返し工程や加工工程において、糸に適切なテンションを与えることは非常に重要です。しかし、必要以上に高いテンションをかけてしまうと、糸へのダメージリスクも高まります。こうしたリスクを抑えつつ、必要なテンションを安定的に付与できるよう、湯浅糸道工業のゲートテンサーは、構造面において徹底した工夫を施しています。
強いテンションを付与するために、例えば平らな板同士で糸を挟み込むような構造にすると、面で接触することにより糸の擦過ダメージが大きくなる場合があります。
これに対し、ゲートテンサーは、糸との接触点が計16箇所(コンパクトタイプでは12箇所)になるよう設計したセラミックガイドを用いた構造となっており、糸にかかる負荷を分散。さらに、セラミックガイドの糸接触部分は丸みを帯びたR形状のくぼみを施し、面ではなく点接触に近いような状態で糸を挟み込む設計を採用しています。
この構造により、糸の擦過ダメージを徹底的に低減しながら、必要なテンションを確保することが可能となりました。
糸を作り、撚り、巻き直し、織る、編む―そんなすべての工程において、テンション付与は欠かせない要素です。しかし同時に、糸への過剰な負担を避ける配慮も、より高い製品品質を実現するためには不可欠です。
湯浅糸道工業のゲートテンサーは、「テンションをしっかりかけたい」「でもダメージはできるだけ抑えたい」という現場ニーズに応えるために設計されています。確かなテンション管理と糸へのやさしさ―その両立が、後々の製品製造における品質の安定と向上を支えていきます。
ぜひ、貴社のモノづくりに、ゲートテンサーの力をご活用ください。
現場に寄り添う技術力|糸道製品のことなら湯浅糸道工業へ
湯浅糸道工業は、繊維業界に欠かせない「糸道製品」の企画・設計・製造・販売までを一貫して手掛ける、数少ない専門メーカーです。自社一貫体制を活かし、ほとんどの製品において、現場環境に合わせたカスタム仕様の設計にも対応しています。これは、自社での企画・設計・製造体制を持つ湯浅糸道工業だからこそできる強みです。
もし現場でのお困りごとがあれば、どうぞお気軽にご相談ください。現場の状況を踏まえた企画提案や、ポンチ絵(簡単なスケッチ)によるイメージ共有など、実践的な検討支援も行っています。
また、事前検討のための仮取り付けをご希望の場合には、サンプルの貸し出し対応も可能です。
湯浅糸道工業は、繊維業界における課題解決のパートナーとして、これからも新たな価値を提供し続けます。製品や装置に関するご相談、ご不明点などがございましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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