Case.17サービス紹介
セラミック糸道が実現する、繊維へのダメージ低減と長寿命化の技術革新
繊維業界やワイヤー製造業において、製品品質に大きな影響を与える部品の一つが「糸道」です。湯浅糸道工業株式会社は、特にセラミック製の糸道に力を入れており、プラスチック製や金属製など様々な材質の中でも、セラミック素材の持つ「硬さ」に注目しています。
この硬さは、糸道の耐久性を飛躍的に向上させ、メンテナンスや交換頻度を大幅に減らすことができます。
しかし、糸道で最も重要なのは、お客様が生産する製品の品質を守るため、糸やワイヤーに与えるダメージを極力抑えることです。湯浅糸道工業は、常にお客様の視点に立ち、生産環境の効率性と製品品質を第一に考えた糸道の開発に全力を注いでいます。
糸へのダメージ低減と耐久性を両立するセラミック糸道の選択
湯浅糸道工業では、様々なセラミック素材を駆使し、各生産現場のニーズに応じた糸道を提供しています。提供されるセラミック素材には、アルミナ、ジルコニア、チタニア、SIC(炭化ケイ素)などがあり、その中でもアルミナ製品が99%以上を占める主力商品です。
糸道製造において素材選びは非常に重要で、素材が柔らかいほど糸へのダメージを大幅に軽減できますが、高速で走る糸の影響を受けやすく、糸道自体が糸との摩擦熱で溶けたり、摩耗しやすくなります。つまり、柔らかい素材ほど、糸道を頻繁に交換する必要が生じてしまいます。
そのため、湯浅糸道工業では、「糸へのダメージ低減」と「糸道自体の耐久性」という相反する課題を、絶妙なバランスで解決するための製品展開を行っています。
代表製品「YM-99C」から分かるセラミック純度と硬度
例えば、湯浅糸道工業の代表的なセラミック素材であるYM-99C。この「99」という数字は素材内のセラミック純度(アルミナの純度)を示しており、純度が高いほど素材の硬度が上がります。
YM-99Cは硬度「Hv 1800」を誇り、糸道製品の耐久性を目的とした製品です。一方、C07-96Cという素材は硬度「Hv 1400」で、比較的柔らかく設計されており、糸へのダメージ低減を優先させた製品です。
また、特に硬さが求められる現場では、SIC(炭化ケイ素)を採用したC17-99SCという製品もあります。硬度は「Hv 2500」と非常に高く、硬い銅線や特殊な加工環境で活躍しますが、アルミナと比べると通気性や耐久性に弱点があり、脆さもあります。
湯浅糸道工業では、これらの製品を通じて、お客様の用途に最適な糸道を提供し、長期にわたる信頼性を確保しています。
コスト重視から複雑形状まで セラミック糸道の製造技術
湯浅糸道工業のセラミック製糸道の製造方法は、主に射出成形、プレス成形、押出成形の3つの方法があります。
プレス成形は板状で単純な形状の糸道に最適で、低コストな製品製造が可能です。
棒状の糸道には押出成形が適しており、射出成形と比べて成形時の冷却時間が不要であるため、生産スピードが速いのが特長です。
製品形状に対する自由度が最も高いのが射出成形です。中空形状やR形状を含む糸道製品の製造には、射出金型の設計や成形品の仕上げに高い技術が求められます。
湯浅糸道工業では、複雑な形状の製品でも、射出成形の特性を活かして、抜き勾配やバリの発生位置を考慮した最適な製品設計をしています。
品質を支える重要な研磨プロセス
さらに、湯浅糸道工業では、糸道に対して梨地仕上げや鏡面仕上げなど、糸やワイヤーとの摩擦を考慮した「表面仕上げ」をオプションで提供していますが、デフォルトでも品質を担保する研磨仕上げを必ず行います。研磨プロセスには、バレル研磨とセンタレス研磨があり、社内に専用機を配備して、徹底した品質確保への取り組みを行っています。
品質を守る管理体制:湯浅糸道工業の全数検査の取り組み
セラミック素材の製造過程では、内部に巣穴やピンホールが内在することが避けられません。これらは特に製品の研磨工程で表面に現れ、品質を大きく低下させてしまいます。湯浅糸道工業では、これらの問題に対応するために、出荷時の「良品」「不良品」の判別に最も人員と時間をかけています。
巣穴やピンホールは素材の品質に依存するため、素材メーカーとの協議が重要ですが、当社では社内の検査体制の強化に最も力を入れています。
専属の品質管理課では、7人のスペシャリストが目視による「全数検査」を行い、不良品の出荷を徹底的に防いでいます。当然ながら検査員の判断にはばらつきが生じることもあるため、社内で基本的な基準を設定し、その基準内での品質管理には、OJTを通じた検査員教育に長年取り組んできました。
また、ロボットやカメラの導入も進めていますが、現状のカメラ性能では、セラミック製品の微細な傷や欠けを判別することが困難です。ロボットを使用した寸法検査(孔径の全数測定)など、自動化できる部分は進めていますが、「良品」「不良品」の判別には、やはり「人の目」が最も信頼できるとしています。
この徹底した品質管理により、湯浅糸道工業の製品は他社と比べてトラブルが少なく、多くのお客様から信頼を得ています。これが、湯浅糸道工業の最大の強みであり、他社との差別化ができている理由です。
糸道製品のパフォーマンスを最大化する鏡面仕上げと梨地仕上げの選択【比較動画あり】
セラミック製糸道の表面仕上げには、「鏡面仕上げ」と「梨地仕上げ」の2種類があります。それぞれの仕上げ方法は、糸やワイヤーの特性に合わせた仕上げを選択することで、より一層のダメージ低減を実現できます。
鏡面仕上げは、セラミックの表面が完全にフラットなのが特徴です。つまり糸との接地面積が広くなるため、摩擦抵抗が高くなります。これに対し梨地仕上げは表面が凹凸形状なため、糸との接地面積が少なく摩擦抵抗が低くなり、糸が滑らかに通過します。
※上の動画は、セラミック製の棒に「鏡面仕上げ」と「梨地仕上げ」を施し、糸との摩擦抵抗の違いを実験した動画になります。
これらの特徴を生かした表面仕上げの選択が、糸やワイヤーの品質保持、そして糸道製品の耐久性を飛躍的に高めるポイントです。
フラットヤーンと梨地仕上げの相性
フラットヤーンを例に挙げると、糸が平らであるため、鏡面仕上げの糸道と組み合わせると摩擦抵抗が非常に高くなり、ダメージを受けやすくなります。このため、フラットヤーンには梨地仕上げが推奨されます。
ツイストヤーンと鏡面仕上げの相性
一方ツイストヤーンでは、糸がねじれているため、梨地仕上げだと点接触が増え、糸が噛み合ってほつれやすくなります。そこで、ツイストヤーンには鏡面仕上げが適しています。
さらに、梨地仕上げの中でもHF2を選択することで、糸やワイヤーとの相性をより細かく調整し、最適なパフォーマンスを発揮させることができます。逆に、フラットヤーンでも摩擦抵抗を加えたい場合には、敢えて鏡面仕上げを採用するケースもあります。
銅線とガラス繊維に対する適切な糸道仕上げの選択
銅線を糸道に走らせる場合、標準仕上げや梨地仕上げでは、表面の凹凸によって銅が削れ、カスがセラミックに付着することがあります。この結果、銅と銅が擦れ合う「友ズレ」が発生し、銅線の品質低下を招いてしまいます。そのため、銅線の場合は表面がフラットな鏡面仕上げが推奨されます。
また、ガラス繊維を使用する場合も特別な配慮が求められます。
ガラス繊維には通常、粘着性のある糊のようなディップコーティングが施されていますが、これが糸道に付着すると、製品の劣化を引き起こす要因となります。
通常であれば梨地仕上げが適している場合でも、ガラス繊維の特性を考慮して、糸道に汚れが付着しにくい鏡面仕上げを選ぶケースが多いです。
ポリウレタン繊維の張力低減に最適な糸道設計
ポリウレタン繊維、特に靴下やおむつ製品に使用されるゴム糸の場合、糸道の内部にベアリングが内蔵されたローラー式糸道が最適です。これは、糸の走行力を利用して糸道を回転させることにより、ポリウレタン繊維の張力を低く保てるので、品質維持に貢献します。
そして、糸道を自走させるには一定の摩擦抵抗が必要であるため、この場合も鏡面仕上げが選択されます。標準仕上げや梨地仕上げでは摩擦抵抗が少なく滑ってしまい、糸道が回転しなくなるため、この場合も敢えて鏡面仕上げを推奨しています。
糸道の種類や表面仕上げを選ぶ際には、糸への抵抗を減らすことが最も重要です。しかし、特殊な繊維や銅線の場合、ガイドへの不要な付着や糸への悪影響を避けるために、鏡面仕上げが適している場合もあります。
このように、糸道の表面仕上げは、最適な表面仕上げを選ぶことがセラミック製糸道の性能を最大限に引き出す鍵となります。
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糸道の理想を追求する湯浅糸道工業の挑戦
繰り返しになりますが、糸へのダメージ低減の理想は「糸道の素材は柔らかいほど良い」。その意味では、セラミックよりもプラスチックやテフロンのような柔らかい素材が適しているのでしょう。しかし、それら柔らかい素材では糸道の耐久性は低く、現場での頻繁な交換を余儀なくされ、お客様側での費用負担や作業工数が増大してしまいます。
湯浅糸道工業の使命は、繊維業界やワイヤー製造業界で高品質な製品生産をサポートすること。
そしてセラミック製を中心とした長寿命の糸道を追求しつつ、鏡面仕上げや梨地仕上げといった表面仕上げ技術、そしてセラミック製でも柔らかいものから硬いものまで幅広いラインナップを揃えることで、「糸道の長寿命 × 糸へのダメージ低減」を追求しています。
お客様に最適な選択肢を提供するために、長年にわたり製品開発に取り組んでいます。
理想は糸に全くダメージを与えず、糸道が摩耗しない永遠に使えるガイドですが、それが不可能であることを理解しつつ、「もっと良い方法はある」という信念を持ち、お客様の声に耳を傾けながら、日々製品開発に情熱を注いでいます。
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湯浅糸道工業株式会社 営業部